熱力学第一法則を実戦で運用する舞台となるのが、シリンダー内の気体が見せる4つの状態変化です。どのパラメータが固定されているかを見抜けば、公式は驚くほど平易な形へと姿を変えます。
まず定積変化では、気体の体積が変化しません。ピストンが一切動かないため、気体がする仕事もされた仕事もゼロ(W=0)となります。したがって第一法則は「ΔU = Q」となり、外部から加えた熱量がすべて気体の温度上昇(内部エネルギー増加)に直結します。
次に定圧変化は、ピストンが自由に動き、圧力が一定に保たれるプロセスです。熱を供給すると気体は膨張しながら温度を上げるため、吸熱したエネルギーの一部は仕事として消費され、残りが内部エネルギー変化に回ります。
そして混同しやすいのが断熱変化と等温変化のペアです。断熱変化では外部との熱の出入りが完全に遮断されるため、Q=0が成立します。第一法則に当てはめると「ΔU = W(された仕事)」となり、気体を急激に圧縮すると外部から仕事をされて内部エネルギーが増加し、温度が急上昇します(断熱圧縮)。逆に気体が外部を押して膨張すれば、自分の内部エネルギーを使って仕事をするため、温度は急低下します(断熱膨張)。
対する等温変化は、巨大な熱源に接触させながらゆっくり気体を変化させる操作です。温度Tが一定に保たれるため、ΔT=0、すなわち「内部エネルギー変化ΔU = 0」となります。第一法則は「0 = Q + W(された仕事)」、移項すれば「Q = −W(された仕事) = 気体がした仕事」となり、外部から与えられた熱量が余すところなく外部への仕事へと変換されます。