苔の絨毯を抜けた先に現れる往生極楽院(重文)は、平安時代末期の建築美を今に伝える奇跡的な空間だ。堂内に安置されている阿弥陀三尊像(国宝)は、中央の阿弥陀如来の両脇に観音菩薩と勢至菩薩が控える。特筆すべきは、両脇侍が上半身をわずかに前に傾け、膝を少し開いて座る「大和座り(正座)」の姿勢をとっている点である。今まさに極楽浄土から臨終の者を迎えに来た瞬間を写し取った、生動感あふれる造形美に息を呑む。
この救済の祈りの背景には、往生要集を著して日本浄土教の基礎を築いた源信(恵心僧都)の思想が色濃く影を落としている。堂内の天井は、舟底をひっくり返したような「船底天井」となっており、創建当時は極彩色の飛天や菩薩が天井いっぱいに描かれていた。肉眼では褪色して見える板絵の奥に、かつて人々が夢見た極楽浄土の光景が鮮やかに立ち現れる。