情念とスリルが交錯するエロス・サスペンスというジャンルにおいて、波木薫が果たした貢献は極めて大きい。単なる刺激の提供に堕することなく、男女の心理戦や暴力性、人間の深層心理に横たわる暗部をあぶり出す触媒として、彼女の佇まいは完璧な説得力を持っていた。
日本映画が培ってきた湿り気のあるドラマツルギーと、90年代以降のソリッドな映像美学が交差する結節点に彼女は立っていた。観客の視線を釘付けにする大胆な身体表現の裏側に、研ぎ澄まされた知性と計算された間合いが息づいている。それこそが、彼女が単なるジャンルムービーのアイコンにとどまらず、本格的な実力派女優として記憶される所以である。