ビジネスの現場では今、急速なAIの浸透や先行きの見えない市場環境により、個人の「メンタルタフネス」や「感情の自己調整力」が過去最高レベルで問われています。そうした激動のなか、スラムダンク勝利学がビジネスパーソンから再評価されている理由は明快です。本書が提唱しているのは、昭和・平成初期に蔓延していた「歯を食いしばって耐える根性論」の対極にある、科学的で再現性の高いメンタルマネジメントだからです。
著者の辻秀一氏は、東京大学医学部を卒業後に内科医を経てスポーツ医学の世界へ転身した異色の経歴を持つスポーツドクター。トップアスリートや企業エグゼクティブを長年指導してきた臨床現場の知見から、「結果に一喜一憂する人間は、プレッシャーに潰される」という冷酷な現実に直面してきました。井上雄彦氏が描く『スラムダンク』の登場人物たちの言動を題材に、勝負の世界で真に求められる心の扱い方を体系化した本書は、時代を超えて普遍的な真理を突いています。
多くのビジネス書が「勝つための戦術」や「他者を打ち負かすフレームワーク」に終始するなか、本書が一貫して問いかけるのは「勝負に向き合うあなた自身の心は、今どんな状態にあるか」という自己対話の質です。外部の出来事に振り回されず、常に高い集中力を保つための思考法が、複雑化する2026年の労働環境において極めて実効的なセルフケアとして機能しています。