中島の登山人生を語る上で、切っても切り離せない存在が平出和也だ。数々の未踏峰を共に踏破してきた二人は、登山界における「奇跡のペア」と称されていた。言葉を交わさずともお互いの疲労度や次の行動が理解できるほど、濃密な信頼で結ばれていた。
平出が前方をラッセルして道を切り拓き、中島がその後ろで重いカメラを回しながら追従する。あるいは、厳しさを極める岩場でトップを交代しながら前進する。過酷な局面であればあるほど、二人の間には不思議な静寂と揺るぎない確信が存在していた。彼らの関係は、単なる山仲間や撮影スタッフという言葉では言い表せない、生命の根底でつながったバディだった。