結論から明確にすれば、大人の発達障害と特定の顔つき(骨格・目鼻立ちの配置・輪郭など)を結びつける医学的根拠は存在しません。米国精神医学会が定める国際的な診断基準『DSM-5-TR』や世界保健機関(WHO)の『ICD-11』においても、発達障害の診断項目に外見的特徴は一切含まれていないのが現状です。
それにもかかわらず、なぜネット上では「アスペルガー顔」「ADHD特有の目つき」といった表現がまことしやかに語られるのでしょうか。その背景には、人間の脳が持つ「動的な印象(表情の動き・視線の配分)」を、無意識のうちに「静的な容貌(顔立ちそのもの)」へとすり替えて認識してしまう認知バイアスが存在します。
他者が感じる「特有の雰囲気」の正体は、顔のパーツの形ではなく、会話中における表情の生起タイミングのズレや視線の泳ぎ方です。これらは骨格の問題ではなく、中枢神経系における情報処理様式の差異が表出している現象にほかなりません。外見そのものに疾患特有の型があると思い込むことは、医学的な事実から著しく乖離した短絡的な誤認と言わざるを得ません。