術後の経過は極めて良好だったものの、本当の試練はそこから始まった。切開・処置された声帯は極めてデリケートであり、従来と同じ力任せの発声に戻せば再発のリスクが高まる。彼女に求められたのは、「新しい声」の操縦法を一から身につけることだった。
専門のボイストレーナーや言語聴覚士とともに取り組んだリハビリテーション。腹式呼吸の徹底的な見直し、喉に負担をかけない共鳴腔の使い方、セリフの抑揚のつけ方。それまでの演技スタイルを大胆に解体し、再構築する気の遠くなるような作業が続いた。復帰後の彼女のセリフは、以前よりもクリアで伸びやかでありながら、芯の強い響きを獲得することとなった。