傷跡の痛みを評価する上で、皮膚の傷跡そのものがどのような治癒経路を辿っているかを観察することは極めて重要です。創部に過度な張力(引っ張られる力)がかかり続けたり、体質的な炎症反応が遷延したりすると、線維芽細胞がコラーゲンを過剰に産生し、傷口が赤く盛り上がる病的な瘢痕へと発展します。代表的なものが「肥厚性瘢痕」と「ケロイド」ですが、両者の性質と治療方針は大きく異なります。
上表の通り、傷口のラインを越えずに赤く盛り上がり、触ると硬い状態は肥厚性瘢痕の可能性が高いと言えます。この段階であれば、シリコンジェルシートや遮光・固定テープを用いた圧迫固定、ヘパリン類似物質による保湿などにより、時間の経過とともに瘢痕組織が成熟して平らな白色の傷へと移行していきます。
一方、傷口の縁を越えて周囲の正常な皮膚へカニの足のように赤紫色の病変が染み出し、夜も眠れないほどの痒みやズキズキ・チクチクした痛みが続く場合はケロイドが疑われます。ケロイドは自然消退が期待できないため、形成外科や皮膚科でのステロイド局所注射、抗アレルギー薬の内服などの早期介入が求められます。