舌がん最大の悲劇は、初期の自覚症状が「ありふれた口内炎」と酷似しているため、受診が遅れてしまう点にあります。口腔外科医や頭頸部外科医が現場で口を揃えるのは、「もっと早く来てくれれば舌を残せたのに」という無念の声です。
一般的な口内炎(アフタ性口内炎など)と舌がんの初期症状には、明確な医学的鑑別ポイントが存在します。最大の違いは「病変の経過期間」と「触れたときの硬さ」です。
良性の口内炎は、粘膜のターンオーバーに伴って通常1〜2週間で瘢痕を残さず消退します。一方、舌がんは自然に消えることはありません。清潔な指先で病変部を軽くつまんでみた際、土台に「硬い芯(硬結)」が触れる場合は、即座に専門機関を受診すべき危険信号です。
また、前がん病変として知られる「白斑症(はくはんしょう)」や「紅板症(こうはんしょう)」にも警戒を怠ってはいけません。舌の側面や裏側がこすっても取れない白い膜で覆われていたり、ビロード状の赤い斑点ができている場合、紅板症では実に50%近い確率で初期がんや上皮内がんが潜んでいると報告されています。