当然ながら、すべてが歓迎ムードというわけではない。ベージュとホワイトで統一された閑静な住宅街に突如としてネオ・ゴシック調の要塞が出現したとき、地域コミュニティには小さからぬ波紋が広がる。
「景観を損ねているのではないか」「将来、売却されずに廃墟化したらどうするのか」といった声が近隣住民から自治体へ寄せられるケースは後を絶たない。しかし、法的な縛りは極めて曖昧だ。建蔽率や容積率、斜線制限を厳格にクリアしている限り、個人の私有地に中世の城を建てようが、法律上は何の落ち度もない。景観条例の網の目を縫うようにして立ち上がる白亜の壁は、個人の自己表現の自由と街の公共性がどこで衝突するのかという、現代の法規の盲点を浮き彫りにしている。