一口に「歯が汚い」と言っても、その内実は表面的な着色汚れから、組織が破壊される深刻な病変までグラデーションが存在します。放置すればするほど改善のハードルは跳ね上がります。
まず、日常的な黄ばみの主たる原因は飲食物に含まれるポリフェノールと唾液のタンパク質が結合して生じるステイン(着色汚れ)です。コーヒー、紅茶、緑茶、赤ワイン、カレーなどを日常的に摂取する人は、エナメル質の表面に強固な色素沈着層が形成されます。さらに喫煙者の場合、タバコに含まれるタール(ヤニ)がエナメル質に浸透し、茶褐色から黒褐色の頑固な汚れへと変貌します。タールは粘着性が高いため、細菌の塊である歯垢(プラーク)を磁石のように吸着させる触媒となってしまいます。
より深刻なのが、歯垢が唾液中のミネラル分を吸収して石灰化した「歯石」の存在です。歯垢はわずか48時間で石灰化が始まり、約2週間で強固な歯石へと変化します。歯石の表面は軽石のようにザラザラしており、そこを足場にしてさらに新たな細菌が繁殖を繰り返します。
この細菌の温床が歯肉に炎症を起こし、やがて歯を支える骨を溶かす「歯周病」へと移行します。歯周病菌が放出する揮発性硫黄化合物(メチルメルカプタンや硫化水素)は、卵が腐ったような強烈な悪臭を放ちます。つまり、黄ばみや歯石を「単なる見た目の問題」として放置することは、自ら強烈な口臭を周囲に撒き散らし、将来的に歯を失うリスクを飼いならしているのと同義なのです。