1960年代の日活映画を語る上で欠かせないのが、吉永小百合、和泉雅子、そして松原智恵子からなる「日活三人娘」の存在です。昭和のエンターテインメント業界が生み出したこの黄金トリオは、それぞれが全く異なる魅力で大衆を熱狂させました。
多くの映画ファンが「日活の絶対的エースは吉永小百合」と記憶しがちですが、昭和芸能史の客観的データをつぶさに分析すると、松原智恵子の放ったインパクトはそれに勝るとも劣らないものでした。その決定的なエビデンスが、浅草の名門・マルベル堂が公表しているブロマイド売上ランキングです。1969年、松原智恵子は女性タレント部門において年間売上第1位の座に輝きました。知性派として国民的スターの地位にあった吉永小百合、下町気質の元気な妹キャラとして親しまれた和泉雅子を退け、当時の日本中の若者が純粋に「手元に飾りたい、眺めていたい美」として彼女を熱烈に支持していた客観的証明と言えます。
吉永小百合との比較論において、批評家や映画研究者は「吉永が日本人の情緒や文学性を背負ったのに対し、松原智恵子はモダンで欧米的なスタイリッシュさを体現していた」と分析しています。三人娘のそれぞれが個性を確立したことで、当時の映画市場は空前の隆盛を極めました。