鬼というモチーフを国民的、ひいては世界的な社会現象へと押し上げた最大の功労者が吾峠呼世晴であることは論を俟たない。『鬼滅の刃』が提示した残酷劇と家族愛の物語は、集英社が誇る週刊少年ジャンプの歴史においても特異な輝きを放っている。敵として立ちはだかる鬼たち一人ひとりに、かつて人間として生きた記憶と絶望のドラマを用意した緻密な作劇は、読者の倫理観を激しく揺さぶった。
そして今、ufotableが手掛ける劇場版「鬼滅の刃」無限城編三部作の展開によって、この熱狂は映像芸術の極点へと達している。原作の持つ切迫した筆致を完璧な映像美へと昇華させたアニメーションは、原作漫画の再読価値をさらに高めた。一コマの静止画に込められた感情の爆発が、スクリーンを通じて全世界の観客にダイレクトに伝播する。まさに漫画出版業界と映像産業が結託して生み出した、21世紀最高峰のコンテンツモデルといえる。