甲状腺の裏側には、声を司る「反回神経」と、体内のカルシウム濃度を調節する微小な器官「副甲状腺」が密着している。全摘手術においては、どれほど熟練した執刀医であっても、これらの組織に影響が及ぶリスクをゼロにすることはできない。
手術後に声がかすれたり、高音が出なくなったりする音声障害は、歌唱や接客業を営む人々にとって職を失うほどの打撃となる。さらに、副甲状腺の損傷や誤摘出によって引き起こされる「永久性副甲状腺機能低下症」は、手足の激しい痺れやテタニー(強直性痙攣)、骨代謝の悪化をもたらす。一生涯カルシウム製剤や活性型ビタミンD3製剤を服薬し続ける毎日は、日常のあらゆる場面で障害を意識させられる原因となる。