栗城氏の挑戦の歴史において、最大の転換点となったのが2012年のエベレスト第4回遠征です。西稜ルートからの登頂を目指したものの、強風と極度の低温に晒され、標高約8,000メートルの最終キャンプで足止めを余儀なくされました。
この挑戦により、彼は重度の凍傷を患い、右手親指以外の両手足の指9本を第2関節から切断するという過酷な代償を支払うことになります。登山家にとって手足の指を失うことは、ピッケルやロープを握る把持力、岩肌に立ち込むバランス感覚を著しく損なう致命的なハンディキャップでした。
常識的に考えれば高所登山からの引退を余儀なくされる局面でしたが、栗城氏は「見えない山を登る」「諦めない勇気」を新たなスローガンに据え、義手のような補助具を駆使して再びエベレストへと向かいました。指を失ってなお山に挑む姿は一部で感動を呼んだものの、登山関係者やネットユーザーの間では「もはや登頂の可能性はゼロに等しい」「いつか命を落とすのではないか」という悲痛な懸念が急速に高まっていきました。