『千と千尋の神隠し』が放つ瑞々しい生命力は、当時10代前半だったキャスト陣の生々しい演技によって決定づけられた。ハクの声を演じた入野自由は当時わずか13歳の中学生。千尋役の柊瑠美も14歳という、まさに思春期の入り口に立つ少年少女がキャスティングされた。
東宝株式会社の配給により記録的なメガヒットを記録する裏で、アフレコ現場は宮崎監督による妥協のない熱血指導が繰り広げられていた。ハクという神の威厳と、少年の透明感。入野自由は声変わり直前の奇跡的な声の揺らぎをフィルムに焼き付けた。千尋におにぎりを差し出すシーンで見せた優しさと、湯婆婆の前での冷淡な声音のギャップ。プロの声優では決して出せない無垢なリアリズムが、ハクという多面的なキャラクターに永遠の血肉を与えたのである。