映像美の極致として今なお根強いファンを持つNHKの人気シリーズ『京都人の密かな愉しみ』。この作品において、街の日常とよそ行きの顔を縫い合わせる象徴的な存在として描かれたのが、まさに俥夫の凛々しい後ろ姿だった。
現在、NHKオンデマンドなどを通じて国内外で再視聴が広がるこの傑作ドラマは、京都という街が持つ重層的なプライドと繊細な美意識を浮き彫りにした。画面越しに映し出された石畳の濡れた光、暖簾をくぐる瞬間の緊張感。視聴者が映像を通じて抱いた憧れを、実際の路上で回収する受け皿となったのがゑびす屋の人力車だ。ドラマの記憶を胸に京都を訪れた旅人は、梶棒を握る俥夫の言葉に耳を傾けながら、自らもまた物語の登場人物となって古都の空気を吸い込んでいる。