寿司屋のメニューで見かける「涙巻きとは」どんな巻物なのか。その実態を一言で表すなら、すりおろした本わさびや刻んだ茎わさびを主役にした細巻き寿司です。一般的な巻き寿司のようにマグロやキュウリといった主具材は入っておらず、芯に入っているのは純然たるわさびのみ、あるいは白ごまや海苔の風味を添えただけの極めて潔い構成になっています。
気になる名前の由来・語源は、食べた瞬間にツンと鼻を突き抜ける刺激によって、どれほど辛さに強い人であっても反射的に「涙を流してしまう」ことから名付けられました。地方や店舗によっては「さび巻き」「わさび巻き」、あるいはその刺激の鋭さから「鉄砲巻き」と呼ばれるケースも存在します。
ルーツを探ると、静岡県の伊豆半島や長野県の安曇野といった名水が湧くわさびの名産地において、収穫したての新鮮なわさびを海苔と白飯で直巻きにして食べていた郷土の風習に行き着きます。これが東京の江戸前寿司や酒場の職人たちに広まり、脂の乗ったネタを食べ終えた常連客が「口をさっぱりさせたい」と裏メニューとして所望したことから、徐々に全国のお品書きへと定着していきました。
使われる具材の中身には主に以下のバリエーションが見られます。
- 生本わさびのすりおろし:最もストレートに刺激が走る王道の仕立て。
- 刻み本わさび(茎わさび):シャキシャキとした軽快な歯ごたえと、噛むたびに溢れるフレッシュな辛味が特徴。
- 茎わさびの醤油漬け+千切りわさび:居酒屋でポピュラーな、酒の肴として完成された濃厚な風味。