この言説がこれほど長く日本人の関心を引きつけてやまない理由には、映像や出版を中心としたエンタテインメント産業の影響も見逃せない。
1990年代に実話怪談のブームを巻き起こした『怪談新耳袋』をはじめとするオカルト実話集において、閉ざされた医療空間のタブーは定番の題材として消費されてきた。病院という本来は「生と死」を扱う神聖かつ清潔な場所が、もっとも世俗的で淫靡な「性」と結びつく背徳感が、読者の強烈な好奇心を刺激したのだ。
デジタル時代を迎えると、その主戦場はYouTubeや各種配信プラットフォームへと移行した。廃墟探索系YouTuberが再生数を稼ぐためにセンセーショナルなタイトルで廃病院を取り上げ、さらにはNetflixなどの動画配信サービスで展開されるリアルな潜入ドキュメンタリーや医療サスペンスが、視聴者の脳内で事実とフィクションの境界を曖昧にさせている。メディアがタブーを再生産し続ける限り、この怪異が風化することはない。