彼の芝居の骨組みを作ったのは、間違いなく数々の厳しい舞台の現場だ。生身の人間と観客が対峙する劇場空間で、一発勝負の緊迫感を何度も潜り抜けてきた。セリフのない一瞬の表情変化や立ち姿だけで感情を雄弁に語る表現力は、場数を踏んできた者だけが手に入れられる本物の武器である。
取材の過程で浮かび上がってきた未公開プロフィールからは、徹底したストイックさが窺える。毎日の発声練習や体幹トレーニングはもちろんのこと、役作りのためには関連する歴史書や心理学の本まで読みあさるという。一見スマートでクールに見える印象とは裏腹に、泥臭い努力を当たり前のように重ねる職人気質な素顔がそこにはある。