代表作がどのようにして生まれたのか。山本裕子のスタジオで行われた取材で、その緻密かつ過酷な制作過程の裏側が明かされた。彼女が選ぶ主たる媒体は油彩画だ。しかし、その技法は伝統的な枠組みを大きく突き抜けている。キャンバスの上に幾重にも絵の具を塗り重ね、削り、再び重ねる。完成までに数ヶ月、時には数年を要するという。
自らのスタイルについて、山本は戦後の抽象表現主義に深い影響を受けたと語る。しかし、単なる過去の運動の模倣ではない。東洋的な間(ま)の概念と、西洋的なダイナミズムを融合させた独自の技法を模索し続けてきた。「絵の具が乾く瞬間の表情を見逃さないこと。キャンバス自身が語り出す瞬間を待つのが私の仕事です」と彼女は微笑む。代表作の裏にある妥妥協なき試行錯誤こそが、作品に類稀な生命力を吹き込んでいるのだ。