藤田美帆の歩みは、平坦とは程遠い。ニュージーランドで暮らしていた時代に出産を経験したものの、離婚を経て幼い藤田ニコルを連れて日本へ帰国。そこからシングルマザーとしての過酷なサバイバルが幕を開けた。
昼夜を問わず働き詰めの日々。アパートの家賃や日々の生活費を工面するため、スナックでの勤務や事務作業など複数の仕事を掛け持ちした。経済的な困窮に直面しながらも、家庭内を決して暗くしなかったのが彼女の真骨頂だ。「お金がないなら知恵と笑いで乗り切る」というバイタリティこそが、知られざる素顔の根底にある。
決して弱音を吐かず、泥水をすするような苦境でも前を向く母の背中を見て、娘は育った。逆境を跳ね返すエネルギーは、まさにこの濃密な人生劇場の中で培われたものだ。