伊香保温泉を語るうえで絶対に外せないのが、「黄金(こがね)の湯」と「白銀(しろがね)の湯」という全く異なる2つの源泉の存在です。この2つの違いを理解していないことが、露天風呂選びにおける最大の失敗原因となっています。
黄金の湯は、戦国時代から湧き出でる伊香保固有の伝統的な名湯です。湧き出た直後は無色透明ですが、多く含まれる鉄分が空気に触れて酸化することで、独特の茶褐色・黄金色へと変化します。湯あたりが柔らかく、身体の芯から温まる「子宝の湯」「冷え性の名湯」として知られています。しかし、黄金の湯は総湧出量が限られており、古くからの「大家(たいか)」と呼ばれる権利を持つ老舗旅館を中心に分配されているため、どこの宿でも無制限に引けるわけではありません。
一方の白銀の湯は、平成期に開発された比較的新しい源泉です。メタけい酸を豊富に含む単純温泉で、無色透明かつ刺激が少ないため、小さな子どもから高齢者まで安心して長湯できる肌に優しい湯です。現在、伊香保温泉の客室露天風呂や大型旅館の多くに引かれているのは、この白銀の湯が中心となっています。
ここで知っておくべき決定的な落とし穴は、「客室露天風呂付きの高級プランを選んだのに、部屋の露天風呂は黄金の湯ではなかった」という事例です。黄金の湯は鉄分やカルシウムの析出物が多く、客室ごとの細い配管を通すと急速に詰まるリスクがあるため、宿側としても大浴場や一部の専用露天にしか引けない事情があります。「部屋でもあの茶褐色の湯に浸かりたい」と考えている場合は、予約前に源泉名と給湯方式を必ず確認しなければなりません。