熱海市で発生した大規模な土石流災害の記憶は、伊豆半島に暮らす人々の心に今も深く刻まれている。伊東市の開発予定地もまた、急傾斜地を含み、大雨による土砂崩れのリスクが常に指摘されてきたエリアだ。住民たちが最も恐れたのは、木々が伐採され、保水力を失った山肌が牙をむくことだった。
「雨が降るたびに、裏山が崩れてくるのではないかと眠れない夜を過ごした」。地元住民のひとりは、絞り出すような声で語る。開発業者は安全対策の万全さを強調し続けたが、自然の猛威の前に人間の設計がどれほど無力であるかは、近年の異常気象が証明している。科学的なデータと住民の生存権、そのどちらを優先すべきかという議論は、常に平行線をたどった。