花子くんの可愛さが一過性の消費で終わらず、長年にわたり読者の心に深く刺さり続ける理由は、彼が背負う「凄惨な過去の真相」にあります。
花子くんの生前の姿である「柚木普」は、1969年に中学生として生きていた普通の少年でした。天文学に憧れ、月へ行くことを夢見ていた心優しい少年が、なぜ校舎内で命を落とし、怪異「トイレの花子さん」の役目を引き受けることになったのか――。その背景には、実の双子の弟である「柚木つかさ」との歪で悲劇的な関係が存在します。
弟のつかさもまた、花子くんと瓜二つの愛らしい容姿を持ちながら、善悪の概念を持たずに無邪気な残酷さを振りまく狂気的なキャラクターです。花子くんはつかさに対して罪悪感と恐怖心を抱いており、つかさが無邪気に抱きついてきた際に見せる花子くんの強張り、怯えた表情は、普段の飄々とした態度との対比で痛々しいほどの庇護欲を掻き立てます。
「自分は罰を受けている」「自分には未来がない」と諦観を抱きながら、それでも寧々の未来を必死に守ろうとする花子くんの姿。この「悲劇的な運命を背負った少年の健気さ」こそが、可愛さを単なる愛嬌から、胸を締め付ける至高の尊さへと昇華させています。