「0÷0」と並んで検索数の多い難問が「$0^0$(0の0乗)」の扱いです。一般に、任意の数 $a$ に対する累乗のルールには次の2つの強力な原則が存在します。
- 原則1:どんな数でも0乗すると1になる(例:$2^0 = 1, 5^0 = 1$)
- 原則2:0は何乗しても0のままである(例:$0^2 = 0, 0^5 = 0$)
この2つの規則が真正面から衝突するのが「0の0乗」です。原則1を適用すれば「1」になり、原則2を適用すれば「0」になります。この問題に対し、現代数学では「文脈によって1と定義するか、未定義(不定形)とするかを使い分ける」という高度な合意が形成されています。
離散数学、代数学、集合論、組み合わせ論の領域では、「$0^0 = 1$」と便宜的に定義するのが標準です。なぜなら、二項定理($(x+y)^n$ の展開公式)やテイラー展開、多項式の総和記号($\sum a_k x^k$)を扱う際、$x=0$ のケースで $0^0=1$ とみなさないと、公式の例外処理を毎回書く必要が生じ、数式の美しさと実用性が著しく損なわれるからです。Python、JavaScript、Ruby、C++などの主要プログラミング言語でも、0 0 や Math.pow(0, 0) の出力結果はすべて「1」を返す仕様に統一されています。
対照的に、微分積分学や極限を扱う解析学の分野では、「$0^0$ は未定義(不定形)」と扱われます。関数 $f(x)^{g(x)}$ において、$x \to 0$ の極限を考えた際、近づき方(アプローチする曲線の角度)によって極限値が 1 にも、0 にも、あるいは全く別の実数にも変化してしまうためです。