溥儀の孤立を語る上で欠かせないのが、身内である一族との複雑な関係性だ。とりわけ溥儀の実弟・溥傑と日本の華族令嬢・嵯峨浩の婚姻を描いた名作ドラマ『流転の王妃・最後の皇弟』は、国策に翻弄された愛新覚羅家の内情を生々しく今に伝える。
関東軍は満洲国皇帝の後継者を確保するため、溥儀に子どもが生まれないことを見越して溥傑に日本の息のかかった婚姻を強いた。自らの血統を乗っ取られるのではないかという恐怖から、溥儀は実の弟に対しても激しい疑心暗鬼に陥り、食事に毒が盛られていないか怯える日々を送ったという。
国家元首という華々しい看板の裏で、家族の絆すら政治の道具として引き裂かれていった。華やかな宮廷劇の舞台裏に漂う冷え切った空気こそが、執政期から皇帝期に至る溥儀の精神を蝕み続けた最大の要因だった。