世界的ベストセラーである『ノルウェイの森』(小説)と映画版を比較すると、性描写の持つニュアンスには大きな違いが存在する。村上春樹の原作テキストでは、ワタナベの主観的なモノローグを通じて、性は死と隣り合わせの日常であり、どこか乾いた透明感を帯びて語られていた。
映像化された本作では、主観的な語りが排除された結果、肉体の生々しさが前面に押し出されている。言葉による内面描写がない分、視覚的な重みが増し、直子の拒絶や苦痛、ワタナベの無力感がよりダイレクトに突き刺さる。原作ファンからは「解釈が重すぎる」という声が上がった一方で、「言葉にできない感情の軋みを映像言語に昇華させた」と高く評価する映画評論家も多く、表現の違いを巡る議論は今なお尽きない。