蕎麦の味の8割は素材で決まる、と言われる。しかし、その素材の力を100%引き出すのは並大抵のことではない。茨城の常陸秋そばや北海道産の厳選素材など、産地や収穫時期に応じた玄そばを仕入れ、自らの手で選別。低温で慎重に保管された実を、その日の気候や湿度に合わせて石臼で手挽きする。
つなぎ(小麦粉)を一切使わない十割蕎麦は、切れやすく打つのが極めて難しい。喉越しと香りの双方を両立させるため、水分の含ませ方や練りの工程には一瞬の油断も許されない。打ち出される蕎麦は、細身でありながら力強いコシを持ち、噛むほどに穀物本来の甘みがじんわりと広がっていく。これは単なる料理ではなく、自然の恵みと職人の執念が織りなす結晶なのだ。