これほど知名度と実力を兼ね備えた親子であれば、テレビ局や映画会社が「母娘初共演」を銘打った大型企画を幾度となく持ち込んできたことは想像に難くありません。大手広告代理店のキャスティング担当者の証言によれば、朝ドラ終了後の2026年から2026年にかけても、数々の特別ドラマや大手企業の母娘共演CMなどのオファーが殺到したとされています。しかし、二人が画面上でがっぷり四つに組む本格共演は、現在に至るまで実現していません。
安易な共演を避ける最大の理由は、伊藤蘭と水谷豊が徹底して貫いてきた「親の看板を娘に背負わせない、使わせない」という教育方針にあります。趣里が芸能界入りを決意した際、両親の名前を一切伏せてオーディションを受け、現在の所属事務所(トップコート)の門を自力で叩いたことは業界内では有名な事実です。伊藤蘭自身もインタビューにおいて「娘は娘の足で歩んできた。私の世界に巻き込むようなことはしたくない」という趣旨の発言を一貫して残しています。
このストイックな姿勢を象徴するのが、2026年末の『第74回NHK紅白歌合戦』でした。母・伊藤蘭が特別企画でキャンディーズの名曲メドレーを披露し、趣里が朝ドラヒロイン・福来スズ子として圧巻の『東京ブギウギ』を歌い上げたあの奇跡的な一夜です。同じ番組の同じステージに立ちながらも、二人は決して「親子」を売りにしたデュエットや過剰な絡みを見せることはありませんでした。あくまで伊藤蘭は50年の歴史を背負う歌手として、趣里は朝ドラの熱狂を背負う表現者として、それぞれの持ち場をプロフェッショナルに完遂したのです。この絶妙な距離感こそが、業界内外から絶賛される所以となっています。