是枝監督といえば、緻密な人物描写と社会の片隅に生きる人々の息遣いを捉える作風で知られる。しかし今回の新作は、従来のエモーショナルな描写に鋭利な犯罪捜査の要素を掛け合わせた異色の極上サスペンス・スリラーだ。物語は、アーケードの路地裏で起きた未解決事件を中心に、街の表と裏に隠された複雑な人間模様を描き出していく。
脚本の打ち合わせに同席した関係者によると、監督は単なる事件解決のミステリーにとどまらず、失われつつある地域コミュニティの絆や過疎化の陰に隠れた孤独を描く重厚なヒューマンドラマとしての側面を強く意識しているという。昼間の賑やかな商業地としての顔と、夜の静寂に浮かび上がる影の顔。その二面性こそが、今作の核心的なテーマだ。