理化学研究所が運用するスーパーコンピュータ「富岳」による飛沫シミュレーションは、マスク界のパワーバランスを決定づけた。微小なエアロゾル粒子を可視化した一連の実験において、不織布マスクは吐き出し飛沫の約80パーセント以上をカットし、吸い込みに対しても高い防御力を示した。これに対し、従来のガーゼマスクは吐き出し飛沫のブロック率が約70パーセント前後に留まり、吸い込み時の捕集効率に至っては約30〜40パーセント程度まで落ち込むというシビアな現実が浮き彫りになった。
この差を生み出す主因は、繊維構造の劇的な違いにある。ガーゼは綿糸を縦横に平織りした構造であるため、糸と糸の間に数十マイクロメートル単位の隙間ができてしまう。一方で、メルトブロー製法で作られた不織布は、極細繊維がランダムに絡み合い、静電気の力(エレクトレット加工)で微粒子を引き寄せて逃さない。ウイルス飛沫や微粒子を物理的に食い止める防壁としての能力において、ガーゼが不織布の後塵を拝することは紛れもない科学的事実だ。