『木の上の軍隊』の誕生には、演劇史に残る重要なドラマが存在します。本作はもともと、劇作家・井上ひさしが構想していた「戦後命の三部作」(広島を描いた『父と暮せば』、長崎を描いた『母と暮せば』、そして沖縄を描く本作)の掉尾を飾るはずの作品でした。しかし2010年、井上ひさしは執筆を果たすことなく惜しまれつつ急逝します。
巨星の遺志を受け継いだのが、劇団モダンスイマーズを主宰し、若手屈指の筆力と評されていた劇作家・蓬莱竜太でした。蓬莱は井上が遺したプロットメモ「ガジュマルの木の上で2年間生き延びた兵士」という実話の骨格を基に、演出家・栗山民也とともに全く新しい戯曲を創出しました。
2013年の初演時には、上官役に堤真一、新兵役に藤原竜也という豪華なキャスト陣が集結。観客や劇評家から「息詰まる密室劇でありながら、どこか喜劇的で切ない」「国家という巨大な木から降りられない人間の寓話」として熱烈な評判を呼びました。その後も山西惇や松下洸平など名優たちによって再演が重ねられ、こまつ座の金字塔として定着しています。