私たちが日常会話で使う「スキャンダル」という言葉は、英語の scandal に由来します。そのルーツを辿ると、古代ギリシャ語で「罠の引き金」や「人を転ばせるつまずきの石」を意味した「スカンダロン(skandalon)」に行き着きます。キリスト教の文脈では「信仰を揺るがす罪の誘惑や躓き」として用いられ、中世ヨーロッパを経て「公衆の道徳感情を傷つける恥ずべき行為や噂」という意味へと変遷しました。
混同されやすい言葉に「不祥事」「事件」「犯罪」がありますが、それぞれが持つ意味合いと社会的レイヤーは明確に異なります。
不祥事との決定的な違いは、対象となる主体の公的責任と道徳的側面にあります。不祥事(ふしょうじ)は「めでたくない事・好ましくない事態」を指し、主に企業や官公庁などの組織が業務上引き起こすミス、コンプライアンス違反、隠蔽工作などに対して客観的に用いられる表現です。一方でスキャンダルは、個人のプライベートな倫理観の欠如(不倫や金銭トラブル)を含め、「大衆の道徳的期待を激しく裏切り、激しい怒りや好奇心をかき立てる不名誉な事態」というニュアンスを強く帯びます。
また「事件」が警察や司法が介入する法的な違法行為そのものを指すのに対し、スキャンダルは法律に抵触しない行為であっても、社会的信用を著しく失墜させるものであれば成立します。「法的に白か黒か」ではなく、「社会的な倫理規範において許容されるか否か」がスキャンダルの成立条件となります。