伊之助の生死を語る上で避けて通れない最大の山場が、無限城における上弦の弐・童磨との戦いです。この戦いは単なる勝敗を超え、伊之助の出生の秘密と過酷な宿命が交錯する極めてエモーショナルな名場面となりました。
戦いの中で童磨は、伊之助の素顔を見てかつて自分が主宰する万世極楽教に逃げ込んできた美しい女性・嘴平琴葉(ことのは)の存在を思い出します。琴葉は家庭内暴力から逃れるために幼い伊之助を連れて寺院に身を寄せていましたが、童磨が信者を喰らう鬼であることを察知し、息子を守るために決死の逃走を図りました。
童磨に崖際まで追い詰められた琴葉は、「この子だけはどうか生き残ってほしい」と願いを込め、幼い伊之助を激流の川へと投げ落としたのです。その後、琴葉は童磨によって無残に喰い殺されました。
自らを捨てたと思っていた母親が、実際には命に代えて自分を守り抜いてくれた事実を知った伊之助は、猛烈な涙と激情とともに覚醒します。「奇跡なんてもんはねえんだよ!」と嘲笑う童磨に対し、伊之助はカナヲと共に立ち向かいました。
あらかじめ自身の全身に藤の花の毒を巡らせ、自らを喰わせることで童磨を弱体化させた胡蝶しのぶの命がけの策略。そして、視力を失いながらも必殺の太刀を放ったカナヲの刃を、伊之助が獣の呼吸の変則的な投擲技で押し込み、見事に童磨の頸を落としたのです。