この過酷な社会構造と人間の業を、鋭いリアリズムで切り取ってきたのが日本の映画界だ。かつての一騎当千のヤクザを描いたエンターテインメントから、近年は組織を抜けた人間の内面に迫る重厚なヒューマンドラマへと潮目が大きく変わった。
その到達点の一つが、西川美和監督の『すばらしき世界』である。主演の役所広司は、人生の大半を刑務所で過ごし、社会へ復帰しようともがく元ヤクザの男を見事に演じ切った。純粋で義理堅い一面を持ちながらも、些細な理不尽に激高してしまう危うさ、そして善良な市民たちの無意識の偏見と偽善にさらされる痛烈な姿は、観客に「更生を受け入れる社会側の覚悟」を突きつけた。
一方、藤井道人監督の『ヤクザと家族 The Family』で綾野剛が体現した男の半生は、時代の変遷に伴うヤクザの興亡と離脱の残酷さを容赦なく描き出した。家族を守るために組織を抜けた主人公を待っていたのは、SNSによる過去の暴露と、愛する家族の日常すら奪い去る激しいバッシングだった。名優たちがスクリーンに焼き付けたのは、過去を清算しようとする人間を容易には許さない現代社会の冷酷な肖像にほかならない。