選考の密室では一体何が起きているのか。歌人の俵万智氏をはじめとする選考委員会には、言語の専門家からジャーナリストまで多彩な顔ぶれが並ぶ。決して単なる「使用頻度の多さ」だけで決まるわけではない。数字の多寡なら検索エンジンのアルゴリズムで事足りるからだ。
選考委員たちが重視するのは、その言葉が帯びる「批評性」と「時代の空気感」である。たとえ爆発的に流行した言葉であっても、誰かを傷つける毒性の強い表現や、一瞬のスパム的な拡散に過ぎないものは慎重に吟味される。言葉の響き、五七五のリズム、口にしたときの心地よさ——俵氏のような表現者が選考に加わることで、言葉が持つ詩情や情念までもが審査の天秤にかけられる。時に数時間に及ぶ激論の末、社会の「光」と「影」を同時に照らし出す言葉が大賞の座を射止めるのだ。