矯正治療をめぐる情報空間には、多くの誤解が蔓延しています。その最たるものが「Eライン至上主義」です。
「Eラインの内側に唇が収まっていれば絶対に美しい」という言説は、鼻が高く顎の骨格が頑丈な欧米人の骨格規格に基づいた指標に過ぎません。平坦な顔立ちで鼻根部が低めの傾向にある日本人が過度にEラインの内側を目指すと、口元が奥に押し込まれたような「鳥のくちばし状」あるいは「平坦で冷たい印象」になりがちです。
また、「非抜歯矯正を選べば絶対に失敗しない」というのも危険な思い込みです。顎の骨が小さい重度の叢生患者が無理に非抜歯で並べようとすると、歯列全体が外側に押し出されて「カッパ口調の出っ歯」になってしまいます。抜歯か非抜歯かの二元論に囚われるのではなく、「自分の軟組織の厚みに対して、前歯を何ミリ後退させるのが最適なのか」をミリ単位でコントロールできる技術力を見極めなければなりません。