かつて航空無線や専門的な軍用レーダーの向こう側にあった飛行情報は、いまや一般市民の手元に完全に開放されている。その立役者がADS-B(放送型自動従属監視)と呼ばれる通信技術だ。機体自身がGPSから取得した高精度の位置、高度、速度情報を毎秒電波で送信し、それを世界中のボランティアや地上局が受信してネットワークで結ぶ。
民間航空のトラッキングにおいて圧倒的なシェアを持つFlightradar24や、データの無加工・無制限提供で支持を広げるADS-B Exchangeの存在は、航空情報の透明性を飛躍的に高めた。民間航空産業の現場では、フライトトラッキングのデータを運航管理や機材繰りの最適化だけでなく、地上グランドハンドリングの配置予測にまで活用している。上空1万メートルを飛ぶ旅客機が発する生データが、個人のスマートフォン画面でほぼ遅延なく更新される時代。空のブラックボックスは完全に過去のものとなった。