神社の起源は1955(昭和30)年にさかのぼる。地域の網元であった岡村斉氏の枕元に現れた一匹の白狐が、「これまでの漁業の恵みは誰のおかげか。吾を祀れ」と告げたという。この啓示を受け、岡村氏が島根県津和野町の太鼓谷稲成神社から御分霊を勧請して創建したのが始まりだ。
由緒ある神社といえば平安や鎌倉の創始を想像しがちだが、ここは昭和の生活者による切実な感謝と信仰から生まれた。地域住民が力を合わせ、険しい岩肌を切り拓いて一基ずつ鳥居を奉納してきた歳月が、いま目の前にある100メートルを超える朱の回廊を形作っている。民間の祈りが創り出した生きた文化財と言っていい。