多くの読者が抱く最大の疑問は、「なぜ穏やかに暮らしていた主婦が、これほど激しい殺意を向けられなければならなかったのか」という名古屋主婦殺人事件の真相です。警察による交友関係の洗出しや、夫・悟さん自身の証言を総合しても、奈美子さんが誰かから恨みを買うようなトラブルを抱えていた形跡は見当たりません。
犯罪心理学の専門家や捜査関係者の間では、以下のような複数の動機仮説が長年にわたり議論されています。
第一に指摘されるのは「一方的かつ歪んだ執着・逆恨み」です。被害者本人には全く自覚がない些細な日常の行き違い、近隣関係、あるいは過去の人間関係の中で、犯人側が一方的に被害妄想や嫉妬を募らせた結果、暴発したという見立てです。
第二に挙げられるのが「誤認殺人(人違い)の可能性」です。アパートの間取りや住人の構成、あるいはターゲットの誤認によって、別の人物と勘違いして襲撃した可能性も完全には否定されていません。しかし、白昼に室内に侵入して直接対峙していることから、顔を確認した上での犯行である可能性が高く、人違い説には疑問を呈する専門家も少なくありません。
第三に「訪問販売や宗教・思想関連のトラブル」です。玄関口での応対から口論に発展した突発的な犯行とも推測されましたが、あらかじめ凶器を所持していたとみられる点から、強い殺傷の意図を持った計画的侵入であったことが窺えます。