『ロマンスの神様』は、スポーツ用品店大手・アルペンのCMソングとして起用され、スキー場へ向かう車内やゲレンデで鳴り響く「冬の代名詞」として日本中に定着しました。しかし、この楽曲の誕生秘話を紐解くと、極めて興味深い事実が浮かび上がります。当時、楽曲を書き下ろした広瀬香美自身はスキー場に一度も行ったことがなく、ウインタースポーツの経験も皆無でした。
本人が後の回顧録や特番インタビューで明かしたところによると、制作拠点であった米ロサンゼルスの自宅で、眩しい太陽とヤシの木を窓の外に眺めながらピアノに向かい、締め切り直前のプレッシャーの中でメロディと詞を紡ぎ出したと語られています。「冬の曲を作ってほしい」というオファーに対し、冬を知らない彼女が選んだアプローチは、徹底した「逆張り」でした。
特筆すべきは、ロマンスの神様 歌詞の意味を精読した際に明らかになる構造です。約5分間の楽曲中、「雪」「スキー」「ゲレンデ」「白い」といった冬を連想させるフレーズは一切使われていません。描かれているのは、週末の合コンに挑む独身女性の剥き出しの本音と打算、そして自己実現へのアグレッシブなエネルギーです。
「性格良ければいい そんなの嘘だと思いませんか」「Boy meets girl 幸せの予感 きっと誰かを感じてる」という歌詞は、綺麗事のないリアルな人間関係の縮図であり、聴き手に強烈なカタルシスをもたらします。雪山という物理的なシチュエーションに依存しなかったからこそ、季節や時代が移り変わっても色褪せない普遍性を獲得したといえます。