萬屋錦之介の役者人生を語る上で欠かせないのが、観客の度肝を抜いた数々の当たり役です。映画界での金字塔となったのが、巨匠・内田吐夢監督と組んだ映画『宮本武蔵』5部作(1961〜1965年)でした。野生味あふれる青年期から悟りを開く剣客へと成長する姿を圧倒的な熱量で演じ切り、日本映画史に輝く傑作として高い評価を確立します。
1970年代に入ると活動の場をテレビ時代劇にも広げ、1973年スタートの『子連れ狼』で主人公・拝一刀を熱演。乳母車に仕込んだ重火器とともに刺客街道「冥府魔道」を往く凄みある演技は社会現象となり、世界的なカルト的人気を博しました。さらに『破れ傘刀舟悪人狩り』では「てめえら人間じゃねえや、叩っ斬ってやる!」の名啖呵で一世を風靡。1978年の映画『柳生一族の陰謀』における柳生宗矩役の怪演「夢でござる」の叫びは、時代劇の枠組みを根底から塗り替える迫力を放ちました。