物語の背景に横たわるのは、1945年の神戸大空襲と、過酷さを増していた太平洋戦争の現実です。爆撃によって母親と住処を一度に失った幼い兄妹は、物資の枯渇した戦時下の社会へと放り出されました。
西宮の叔母の家で生じた摩擦と、それに伴うふたりの孤立。それは単に「意地悪な大人」と「無垢な子供」の対立ではありません。戦時下という極限状態において、誰もが自分の子供や生活を守ることで精一杯になり、他者へ差し伸べる余裕を失っていたという悲しい現実があります。清太が自尊心を守るために社会との繋がりを断ち切った決断が、結果としてどのような帰結を招いたのか。極限状態における人間心理に踏み込むことが、深い考察への鍵となります。