事件から9年が経過した2026年現在、橋爪功は80代半ばを迎えている。一時期の自粛を経て仕事に復帰し、今なお枯れた渋みのある演技で観客を魅了し続けているが、その表情にはかつてない深みと、どこか達観したような影が漂う。
近年のインタビューで、彼は家族について直接言及することは少ない。だが、親しい知人によれば、「子どもは子ども、自分は自分」という割り切りを持ちつつも、息子の将来を案じない日は一日たりともないという。突き放すような冷たさと、血のつながった親としての情愛。その狭間で揺れ動く老俳優の姿は、現代の家族が抱える「個と共同体」の葛藤そのものである。