大相撲の世界において、偉大な父の背中を追ってまわしを締める二世力士の存在は珍しくない。かつての貴乃花や若乃花、あるいは近年話題を集める若手力士たちのように、横綱の血筋というだけで世間の注目と期待は破格のものとなる。そうした背景もあり、「八角理事長の息子もいずれ角界入りするのではないか」という期待混じりの噂は、彼が幼少期の頃から相撲界の周辺で囁かれていた。
しかし、結果としてその予測は外れることとなった。周囲の熱烈な視線とは裏腹に、本人が力士としての道を歩むことはなかったのだ。体格や才能の有無以前に、名横綱の息子として背負う重圧は計り知れない。父である八角理事長自身もまた、我が子に対して決して角界入りを強要することはなかったとされる。自らが身をもって知る勝負世界の苛烈さを思えばこそ、親として子の意思を尊重するスタンスを貫いたのだろう。