麻央さんは2014年に乳がんの告知を受けて以降、懸命な治療を続けていました。2017年春に再入院したものの、本人の「自宅で家族とともに過ごしたい」という強い願いから、同年5月下旬に退院して在宅医療へと移行します。家族と同じ空間で朝を迎え、子どもたちの声を聞く生活は、彼女にとって何よりの心の支えでした。
しかし、2017年6月22日の夕方、病状は急変を迎えます。舞台稽古と公演を終えた海老蔵氏のもとに、麻央さんのお母様から「息苦しそうにしている、早く帰ってきて」と連絡が入りました。急ぎ自宅へ駆けつけた海老蔵氏が目にしたのは、すでに言葉を発することすら極めて困難な状態にある麻央さんの姿でした。
家族全員がベッドの周りに集まり、見守る中でその瞬間は訪れます。麻央さんは息を引き取る直前、海老蔵氏の目を見つめ、力を振り絞るように「愛してる」と一言だけ口にしました。それが彼女が生涯で最後に残した言葉となりました。愛する家族に囲まれ、感謝と愛情を伝えきった穏やかな旅立ちでした。