厚生労働省の健康調査や睡眠専門クリニックの臨床データによると、日本人成人の約4割が「睡眠による休養感が十分に得られていない」と回答しています。この疲労感の最大の引き金となっているのが、就寝中の深部体温の低下障害です。
人間の生体リズムには、就寝直前から手足の末梢血管を拡張させて熱を逃がし、脳や内臓の温度である「深部体温」を一気に下げることで深いノンレム睡眠に入るという快眠メカニズムが備わっています。しかし、寝室の温度や湿度が高すぎると皮膚からの放熱が妨げられ、逆に寒すぎると血管が収縮して血流が滞り、深部体温が下がりきりません。その結果、浅い眠り(レム睡眠やステージ1・2の浅いノンレム睡眠)ばかりが続き、成長ホルモンの分泌や自律神経の修復が行われないまま朝を迎えてしまうのです。
睡眠環境診断士や生体気候学の専門家が推奨する、深部体温を的確に制御するための温湿度・光の黄金比は以下の通りです。
- 室温の適正値:夏季は25〜26℃、冬季は16〜19℃(寝具内の「寝床内気候」を33℃±1℃に保つ設定)。
- 湿度の適正値:年間を通じて50%〜60%(40%未満は粘膜の乾燥、65%以上は発汗による体温調節不全を誘発)。
- 光環境の基準:就寝前2時間は間接照明(暖色系・100ルクス以下)、就寝中は0.3〜1ルクス(月明かり程度、または真っ暗)。
日本睡眠学会所属の研究者・樋口重和氏らの光環境に関する報告でも指摘されている通り、夜間に強い白色LEDやブルーライトを浴びると、睡眠誘発ホルモンであるメラトニンの分泌が強力に抑制され、体内時計(概日リズム)が後退して夜型化が進行します。照明の調光と適切な室温管理こそが、睡眠の質を上げる方法の土台となります。