ジブリ作品の配役を巡っては、ネット掲示板やSNS上で「本職の声優を排除して俳優ばかり起用している」といった論争がしばしば見られます。しかし、『紅の豚』の実情を詳細に分析すると、その通説は事実とは異なることが分かります。
本作には、森山周一郎氏(吹替の第一人者)、大塚明夫氏、大塚周夫氏、矢田耕司氏(マンマユートの船員役)、田中和実氏、佐藤正治氏など、当時の青二プロダクションやマウスプロモーション等に所属する最高峰のプロ声優陣が多数キャスティングされていました。つまり、話題性先行のタレント起用ではなく、画面の空気感とリアリティを構築するために「劇団出身の俳優」「声優界の重鎮」「シンガー」を適材適所で厳選した結果が、あの布陣だったのです。
宮崎監督が求めたのは、ステレオタイプなアニメ的演技ではなく、「生活の匂いがする生々しい肉声」でした。この方針が、30年以上経った今でも色褪せない映画の格調を生み出しています。