相手に不快感を与えず、かつ自社の要求を的確に通すコミュニケーションの要となるのが、洗練された言葉遣いです。一流の秘書は、直接的な表現を避け、角を立てずに本題を伝える「クッション言葉」を状況に応じて自由自在に使いこなします。
例えば、役員が多忙で面会を断らざるを得ない場合でも、単に「あいにく都合がつきません」と突っぱねることはありません。「大変恐縮ではございますが」「お心遣いには深く感謝申し上げますが」といった前置きを添え、「あいにく該当の日は先約が詰まっておりまして、もし可能であれば別のお日にちをご案内させていただけないでしょうか」と代案を提示します。相手の立場を尊重しながら、毅然と主導権を握る話術こそがビジネスマナーの心得の真髄です。
同時に、視覚的な印象を左右する秘書の身だしなみ基準には、厳格な規律が存在します。キーワードは「上質なアンダーステートメント(控えめな品位)」です。主役である役員を引き立てる立場として、華美なブランド主張や過度なトレンド追従は厳に慎まれます。
ネイビーやチャコールグレー、淡いベージュを基調とした上質なウールやシルク混のスーツを着用し、シワや毛玉の徹底的な排除に気を配ります。靴は歩行時に耳障りな足音を立てないヒール高(3〜5cm程度)を選び、アクセサリーは小ぶりの本真珠やシンプルなプラチナなど、清潔感と控えめな格式を演出するのが鉄則です。強い香水は避け、近づいた際に微かに清潔な石鹸の気配が漂う程度の配慮が、役員室の厳格な空気を保ちます。